ASCO 2025 Plenary Session @Chicago
~ 世界最大のがん学会から、注目の5演題を紹介 ~

1.NIVOPOSTOP試験(頭頸部癌)
術後再発高リスク頭頸部扁平上皮癌に対し、現在の標準治療である放射線・シスプラチン療法にニボルマブを併用する第III相試験(NIVOPOSTOP)で、3年無病生存期間の有意な延長が示された(中央値63.1% vs 52.5%, HR 0.76)。術後補助療法への免疫チェックポイント阻害薬導入が新たな選択肢となる可能性がある。一方で本試験とは別でKN-689試験により術前後にペムブロリズマブの有効性も示されており、今後頭頸部癌において術前・術後治療適応に関しては複雑な様相を呈してきた。キャンサーボードによって適応症例の慎重な議論が必要であろう。
2.ATOMIC試験(大腸癌)
dMMRステージIII大腸癌に対する補助化学療法にアテゾリズマブを追加したATOMIC試験にて、3年DFSはアテゾ併用群で86.4%、FOLFOX単独群で76.6%、HR 0.50と有意な改善を示した。有害事象はコントロール軍に比較してアテゾ郡で白血球減少がみられたが管理可能であった。dMMR結腸癌における術後免疫療法が新たな標準となる可能性がある。DiscussionではCAPOXの代替は可能かという質問が議論された。
3.SERENA-6試験(乳癌)
HR+/HER2–進行乳癌において、一次治療の内分泌療法中にctDNAでESR1変異を検出した段階でcamizestrantに切り替えることで、PFSを有意に延長した(16.0ヶ月 vs 9.2ヶ月 HR 0.44)。SERENA-6試験は、進行前の分子変化を捉えた早期介入が臨床的ベネフィットにつながることを示した、ctDNAガイド治療の画期的な国際的試験である。
4.VERIFY試験(Polycythemia Vera;真性多血症)
Polycythemia Vera患者を対象としたVERIFY試験において、標準治療へrusfertideの追加投与は、主要評価項目であるHctコントロールの達成率を有意に改善し、瀉血回数の減少、疲労や症状スコアの改善も認められた。鉄調節ホルモンであるヘプシジン(hepcidin) を模倣するという新しい機序をもつrusfertideは、内因的な造血制御に介入することでPV治療パラダイムを変える可能性を示した。
5.MATTERHORN試験(切除可能胃癌・食道胃接合部癌)
切除可能な胃・食道接合部癌に対して、術前後FLOT療法にデュルバルマブを追加したMATTERHORN試験にて、主要評価項目であるイベントフリー生存(EFS)の有意な延長が示された(2年EFS; 67% vs 59%, HR 0.71)。EFSの改善は主要サブグループ・地域別でも一貫しており、今後の術前免疫併用療法の標準化に影響を与える可能性がある。DiscussionではHER2陽性例についての質問などがあったが、本試験ではHER2に関して明確な基準はなく今後の検討課題となるだろう。
プレナリーセッションを通しての総評
今年のプレナリー演題は、がん治療における免疫療法の適応拡大と、バイオマーカー主導の個別化治療の進展を強く印象づける内容であった。特に注目すべきは、5演題中3題で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の周術期導入がPositiveであった点であり、さらには固形腫瘍の治療戦略におけるタイミングの最適化が新たな焦点となっている。術前術後ICI導入によるDFS改善(ATOMIC、NIVOPOSTOP、MATTERHORN)の結果によりますます免疫療法の日常プラクティスでの需要が高まりirAE対策などの重要性もさらに増すであろう。またctDNA陽性をトリガーとした早期介入(SERENA-6)は、個別化医療の成熟を象徴する結果であった。rusfertideによるPV治療の新規メカニズムも含め、今後の臨床実装が期待される内容が揃った。
(文責:加納嘉人)